自然■若緑の彩り頁
いなかには、狭い道があります。
田んぼのあいだにある、昔から牛や馬が通ったかもしれない、田植えの苗や収穫した稲を運んだであろう、道です。

道と田んぼのあいだには、必ずといっていいくらい、小川があります。
田んぼに水を運ぶための水路です。
今では、道も舗装され、住宅が増え、宅地のあいだに田んぼがあるような風景に変わってきました。
それでも、この辺りは山近く、水もきれいで、小川はいつもさらさらちゃぷちゃぷと流れていました。
わたしは、広い田んぼのまん中に立つような農家に育ち、そんな小川に親しんで育ったせいか、水の流れが好きです。
街の中の、それほどきれいでなくなってしまった川でも、橋の上では立ちどまって、流れの音を聞きます。
そんな、小川のあるいなかの風景が、最近変わってきました。
田んぼがほんとうに少なくなってしまい、それもさみしいのですが、道の傍を流れていた小川も、すがたを消しはじめたのです。
車が多くなり、細い道は不便なのでしょう。
小型車ならばゆうゆうでも、ちょっと大型となると、小川の上にタイヤがはみ出しそうになりながら通る車もあり、見ているほうがはらはらしますから。
いちばん簡単な方法として、小川を塞いで道にすることが考えられたのです。
U字溝状のものをひっくりかえす、つまり小川にふたをするようなかたちで、上を通れるようにする。
水路をすでにセメントで固めたりU字溝にかえたりしてある小川には、ほんとうに蓋だけかぶせたようなところもあります。
さくじつ久しぶりに子どもを保育園に迎えにいったら、そんな工事をまたひとつ、見てしまいました。
そこは、小川とはいえ幅も広く、急な坂道に沿って流れ落ちる川で、道と反対側は高い石垣が積み上がっていました。
セメントでつめたような石垣でなく、それぞれの石のあいだから草がはえたりしていました。
上のほうから
コスモスが垂れるように咲いていたり、春には小さな黄梅の花が咲いていたりしました。
夏の暑い日も、流れ下る水の音に、いっしゅんホッとしながら通っていたものです。
わざわざ探してでも、そんな気持ちの和む風景はもうあまり見られないのに、と思うと、とても残念です。
こんかいは、ちょっと悲しいはなしになってしまいましたね。
季節はもう秋、コスモスが揺れ、キンモクセイのいい香りがただよってきています。